
ご相談の病名/症状
大腸癌を発症し、肝臓転移が見つかり腹水が溜まりだした。
これまでの経緯・症状
73歳の女性。数年前から貧血を感じ、健康診断を受ける。検査結果でヘモグロビン(HB)は7.8で貧血傾向を指摘。合わせて便潜血反応も陽性。精密検査を受けることに。
大腸カメラの結果、大腸癌が発覚。TNM分類T3N1M0であったため手術で出来る限り切除したが、3年後に再発。
MRI、PET-CTなどで詳しい検査を行い、肝臓への転移が判明しステージ4、化学療法を受けることになる。
しかし、その後の経過が悪く化学療法の副作用などで体力低下、食欲不振、倦怠感が続く状態が続き、低栄養状態もあり腹水が溜まりだす。
病院の治療と併用して、何とか出来る方法はないかと当薬舗に漢方相談に至る。
【その他、患者様が感じている症状】
手足のしびれ、食欲不振、脱力感、お腹の圧迫感など
漢方相談前の血液所見
※表は左右にスクロールする事が出来ます。
WBC | RBC | HB | PLT | ALB | TP | CHE | CRE | CRP |
3900 | 223 | 7.8 | 13.3 | 2.0 | 5.8 | 80 | 0.91 | 3.85 |
※表は左右にスクロールする事が出来ます。
・アルブミン基準値3.9以上g/dL
・CHE基準値女性:200~452U/L
・CRP基準値0.14mg/dL以下
血液検査結果からみると、炎症反応の高値とアルブミン、コリンエステラーゼの低値の結果から肝機能の低下が伺える。結果的に腹水が溜まりやすい傾向になっている。
患者様の症状に対する漢方のご提案内容
患者さまは、化学療法の副作用や低栄養の状態もあり体力が低下している。現代医学の治療と併用して、症状の緩和を図りたいとの希望あり。全身状態や腹水の量、体力の程度、栄養状態、炎症状態を総合的に評価し、主に以下の漢方ご提案。
・体力が低下している状態を加味し、気を補い全身の活力を高める。
・利水作用があり、体内の水分代謝を良くする。
・食欲不振や疲労感の改善を目指し、体を温め、消化機能を高める。
・炎症を抑える。
・抗癌剤の副作用を抑える。
上記を目指す漢方をご提案する。
漢方の利用後の経過と数値の推移
※表は左右にスクロールする事が出来ます。
■腹水の漢方対策前
WBC | RBC | HB | PLT | ALB | TP | CHE | CRE | CRP |
3900 | 223 | 7.8 | 13.3 | 2.0 | 5.8 | 80 | 0.91 | 3.85 |
■腹水の漢方対策→15日目
WBC | RBC | HB | PLT | ALB | TP | CHE | CRE | CRP |
4250 | 233 | 7.9 | 12.0 | 2.2 | 6.0 | 88 | 0.88 | 2.1 |
対策開始から15日目、総タンパク(TP)、アルブミン(ALB)、コリンエステラーゼ(CHE)が上昇、少しずつ肝臓の蛋白質合成能力、栄養の状態の回復が推測され、良い方向に向かう。それに伴い排尿量、排便量が増え、腹水が引き始める。また手足のしびれが無くなる。
■腹水の漢方対策→30日目
WBC | RBC | HB | PLT | ALB | TP | CHE | CRE | CRP |
4950 | 266 | 8.2 | 10.2 | 2.8 | 6.2 | 111 | 0.9 | 0.88 |
対策開始から30日目、炎症反応(CRP)が一気に低下する。さらにアルブミン(ALB)、コリンエステラーゼ(CHE)が上昇し、肝機能の活性が伺える。腹水穿刺を頻繁に行う状態であったが、かなり間隔があくようになる。食事量も増え、さらに排尿量、排便量も増える。腹水がある程度、落ち着きを取り戻し、息切れなどの症状も改善をみせる。
以上のような変化、経過を辿り、引き続き漢方の利用を継続する。
漢方を始めて変化を感じられた期間
腹水の漢方対策を始めて約15日程度で、少しずつ良い変化が現れ始める。
その他、患者様が感じられた変化
体力、食欲、息切れ、手足のしびれが回復をみせる
担当者の解説
この事例では、腹水の軽減や栄養状態の改善に関して、漢方の対策によりポジティブな作用があったと考えられます。
代謝の改善と炎症の軽減、利水作用のある生薬などにより、栄養状態の回復と肝臓のタンパク質の合成能力が高まり、結果的に血管透過性亢進が抑えられ、余分な水分が排出、腹水による腹部膨満や圧迫感が緩和されたと考えられます。
また、血液検査で炎症マーカー( CRP)の低下が確認されたことから、ご提案した生薬が持つ抗炎症作用が全身の炎症反応を抑え、炎症の部分での腹水の悪化を防ぐことができたと推測されます。
上記の経過から良い方向に向かっているため、引き続き漢方の継続をし、病院の治療と合わせて経過を見ていく運びになっています。
※上記は過程を記したもので効果を表すものではありません。